平成29年7月20日 中学校全校集会 の話

(はじめに)

今から紹介する数字は何の話か考えてみてください。

6,200万票 対 6,400万票で、6,200万票の勝ち。票数の合計が約1億3,000万になるので、相当に規模の大きな話です。

答えは、昨年のアメリカ大統領選挙の結果です。トランプ候補はクリントン候補より200万票少なかったのですが、大統領選に勝利しました。

これは、有権者による投票総数の多寡でなく、州ごとに割り振られた選挙人の獲得者数によって大統領が決まる仕組みになっているからです。各州には人口などに応じて一定の数の選挙人が割り振られており、大半の州では、一般の有権者による投票により1位になった候補者が、その州の選挙人を全員獲得します。選挙人はアメリカ全土で538人。今回の選挙では、トランプ氏が30州の306選挙人、クリントン氏が21州の232選挙人を獲得し、その選挙人による投票を経て、トランプ大統領が誕生しました。

この制度では、選挙人の数の少ない州では負け続けたとしても、選挙人の多い州で勝つことにより、最終的には(仮に得票総数で負けていることがあっても)獲得人数が上回るケースが生じます。

まさに今回がそのケースに当たり、得票総数で200万票上回ったクリントン候補でしたが、選挙人の獲得者数が上回ったトランプ候補が当選した訳です。

(いろいろな決め方)

国のトップを決める4年に1度の大統領選挙から、身近なところでは、じゃんけんやあみだくじ、コイン投げなど、物事を決める方法は様々です。皆さんは生徒会活動を行っていますが、規則を変える時には、意見をまとめて案を作り、生徒間や学校との間で話し合い、多数決などにより決定しています。これも決め方のひとつの方法です。

日本全体に目を向けると、最近、「選挙制度改革」、「一票の格差是正」に関する記事がよく出ています。衆議院や参議院の議員一人当たりの有権者数について、地方と大都市圏との間に大きな開きがあるのは、憲法14条の法の下の平等に反しているとして、全国各地で裁判が起こされています。参議院議員の場合、議員あたりの有権者数が最も少ないのは福井県で約33万人(有権者66万人÷議員定数2名)。最も多いのは埼玉県で約101万人(同609万人÷同6名)。つまり、埼玉県民の1票は福井県民の1票より1/3の重みしかないというものです。

この一票の重さの違いを縮小するため、参議院では2年前に大都市圏の議員数を増やし地方の議員数を減らすとともに、衆議院でも今年、地方の議員数を減らしました。しかしながら、日本全体で人口減少が進んでおり、特に地方都市での減り方が大きく、逆に大都市圏では増加しています。

地方から大都市圏への人口移動が続く限り、今後また、地方の議員数を削減し、大都市圏の議員数を増やし続けていくと、地方が持っている様々な意見を国会に伝えることがますます困難になる懸念があります。

確かに、法の下の平等は保障されるべき権利ですが、一票の格差を是正するという考え方のみに則って議員数を変えていくと、地方選出の数少ない議員と大都市選出の多数の議員により、日本が抱える様々な問題、例えば地方と大都市圏とのあり方について方向づけを行っていくことになります。大都市偏重の政策になりはしないか心配なところです。

このため、この問題を根本的に解決するために、全国の地方自治体や各政党、国会において、選挙制度や衆参両院の機能について、憲法改正も含めて検討が進められているところです。

(自分のことは自分で決められる)

今紹介したような、物事を決める「制度」や世の中の「仕組み」を変えるには、憲法や法律を改正するなど、いろんな人たちの意見を聞き、たくさんの手続きを踏む必要があります。

しかし、何の手続きも必要とせず、簡単に決めることのできることがあります。それは自分自身のことです。もちろん、進路のことなどは家族と相談する必要がありますが、たとえば将来の夢、身近なところでは、この夏休みの目標などは、自分で決めることができます。自分で決められることから、甘さが出るかもしれませんし、言い訳を作ることも簡単です。

明日から夏休みを迎える皆さんには、勉強やスポーツなど、休み中の目標を立ててほしいと思います。目標に向かって、一歩ずつ前進する夏休みになることを期待しています。

私には、皆さんのような長期休暇はありませんが、この夏の目標として語学に取り組むことにします。数年後(?)の海外旅行を夢見て、検定試験にもチャレンジしようと思います。