平成29年10月2日中学校終始業式 校長あいさつ

4月から新しい学年がスタートして半年が過ぎましたが、皆さんはこの半年をどのように感じているでしょうか。

夏休み前の集会で「ジェットコースターのような3か月間」と表現した1年生の生徒がいましたが、高志中学校での生活は、これまでの人生で最大の変化だったことと思います。先輩からのアドバイスやクラスメートとの支え合いによって、よく乗り切ってきました。

2年生は年間最大のイベント、学校祭を中心となってリードし、1年生をしっかりとサポートし、大成功に導いてくれました。

3年生は、入学以来この2年半の間、常にプレッシャーの中にありながら活動に取り組み、勉強に部活動に大きな成果をあげてくれました。

 

今日から後期が始まります。目の前にあることに集中して取り組むことも大切ですが、年度の折り返し点を過ぎる今日からは、次の学年をイメージして、必要な準備は何かを意識してほしいと思います。特に3年生は、高志高校での学校生活の準備に取り組んでください。他の中学校の生徒は高校に入るための準備、即ち受験勉強に大半の時間を費やします。皆さんは高校に入るための準備は必要ないので、その時間を高校生活で必要となることに前倒しして有効に使ってほしいと思います。

今日は、高校生活よりさらに先の、社会人に必要なことについてお話しします。

その前に先ず、イタリア・ミラノにある専門学校の夏期特別講座でのエピソードについて紹介します。私にとっては"ちょっと前"の出来事ですが、20年前のことですので、皆さんは大昔のことと思うかもしれません。

この学校はデザイン専門の学校で、海外から多くの留学生が学びに来ています。7月に2週間の特別講座を開催しており、当時、福井県から3名の社会人をデザイン研修のため毎年派遣しており、他にも日本人数名が受講していました。

講師から与えられたテーマについて各受講生が発表していたときのこと。ある日本人受講生(福井県以外の参加者)が、予め用意した英文原稿を片手に読み上げていたところ、専門学校が用意した通訳(英語⇔イタリア語の通訳)が原稿を受講生から取り上げて、要点をイタリア語で説明し始めました。

また、別の日本人受講生(福井県以外の参加者)が英語で説明していたところ、英語⇔伊語の通訳が理解できなかったため、その受講生は居合わせた別の通訳(日本語⇔伊語の通訳)に日本語で説明し、その通訳がイタリア語で説明していました。

皆さんは、何が問題だったと思いますか。

この授業は、講師から与えられた課題に対して、自分の考えをまとめプレゼンテーションするものでした。紹介した日本人2名の発表の中身はともかく、残念ながらプレゼンの体を成していませんでした。

「プレゼン」と「説明」との違いは分かりますよね。皆さんは高志中学校の様々な授業でプレゼンを数多く行っています。半年間拝見しましたが、得手な人、苦手な人、いろいろです。でも苦手だからといって悲観する必要な全くありません。上手下手は才能ではなくスキルです。知っているかどうか、心がけるかどうか、訓練しているかどうか、の違いでしかありません。

では、普段の授業の中で何を意識したら良いか。

後期の授業には、前期に調べたことを発表する機会が数多くあります。予め用意したメモやパワポ資料を朗読するのではなく、自分の言葉で表現するように意識してください。また、聞いている人たちには質問する力が求められます。発表内容や疑問点を確認するための質問に止まらず、自分の考えを提案するタイプの質問が積極的に出ることを期待しています。

さらに高志中学生の皆さんには、学校生活に止まらず、「社会人として求められる力」についても意識してほしいと思います。実は「プレゼンテーション」は「コミュニケーション」のほんの入口に過ぎず、さらにその先には、「交渉」や「説得」など難易度の高いものが待ち受けています。

AIが普及するにつれ人手が不要となることが見込まれます。オックスフォード大学と国内シンクタンクが共同で、国内601種類の職業について、人工知能やロボット等で代替される確率を試算した結果、10~20年後に日本の労働人口の約49%が就いている職業において、代替可能との推計結果が出たとのことです。

一方で、『競争社会の歩き方』(大竹文雄著)によると、AIがどんなに進化しても、人間にしかできない仕事が存在するとし、経営アイデア・戦略、高度な対人コミュニケーションサービスを例として掲げています。

皆さんが将来進むであろう分野は、AIの代替可能性は低いようですが、それは言い換えれば、AI以上の創造力や高度なコミュニケーション能力(交渉、説得・・・)が求められていることに他なりません。

自分が将来進む道に必要となる能力は何か、そのために中学や高校で何を身につけるか、さらに、この後期をいかに過ごすか。物事を長いスパンで捉え、全体を俯瞰した上で、この半年間の過ごし方、目の前の課題への取り組み方を考えてほしいと思います。